高齢者は、いつ、何があるかわからない

一人暮らしの高齢者のイラスト

 

概要

 元気そのものだったのに、急に亡くなる(突然死)という人もいる。60代でも、急に認知症の症状が出てくる人もいる。高齢者になったら、いつ、何があるかわからない。「元気な時に遺影を撮影しておく」、「生前に遺品を整理する」、「ペットは飼わない」など、生前に準備できるものは準備しておくことが、自分のためにも、周囲の人のためにも必要ではないか。
 なお、一人暮らしの高齢者は、孤独死に備え、「毎日の定時連絡」、「万が一の時の緊急連絡」の体制を作っておくことが必要だ。

明朝、目が覚めなかった時にどうするか

一人暮らしの高齢者が準備すべきこと

 いわゆる突然死は、知人にも何人かいる。「心不全のために翌朝起きてこなかった」、「風呂で死んでいた」などの事例は、高齢者でなくても意外に多い。今夜、眠ったまま、明日の朝、目が覚めなかった時にどうするかといえば、自分では、どうしようもない。

 特に、一人暮らしの高齢者の場合は、「孤独死」の可能性が高いと思われる。何日間も発見されない可能性さえある。日ごろから、あらかじめ信頼できる人に頼んで準備しておくべき事項はたくさんある。

 こういった対応は、死亡の場合はもちろんだが、突然に起き上がれなくなった、急に入院した、救急搬送されたといった場合も同じだ。旅行と違って、準備できない。特に、一人暮らしの高齢者の場合は、長期間、異変を発見してもらえない可能性も高い。

 高齢者は、遅かれ早かれ、一方の配偶者や子供たちとも別れ、いずれ、こういう事態を迎えることがある。高齢者単身世帯は増加しているが、自分が一人暮らし高齢者になった場合は、突然死や緊急入院等に備え、以下の準備をしておいたらどうか。

遠くの親類より近くの他人 ~定時連絡、緊急連絡

 高齢者単身世帯の場合は、毎日、定時に誰かと連絡をとるという安否確認体制を作っておく(定時連絡体制)。ラインやショートメールでもよいし、電話でも良い。重要な事は、連絡がとれない場合の緊急対応を取り決めておくことだ。

 先方が、「今日は、連絡を忘れたのかな」と思った時は、倒れているかもしれないと考えて、「どうしたの」と折り返して連絡してもらう。それでも、応答しなかったら駆けつけるといった対応が大事だ。定期配達の弁当会社でも、受取人が異変があれば登録先に連絡してくれる会社もある。

 昼になっても雨戸が開かない、新聞が取ってない、夜になっても電気がつかない、呼びかけても電話をしても応答がない、洗濯物が干したままだなど、「いつもと違う。何か変だ。」ということは近所の人でなければ気づかない。もし、こういった異変に気付いたら、「親族など特定の連絡先への連絡をしてもらうこと」を近所の複数の人に頼んでおく緊急連絡体制)。

 高齢者は、「転んだら、一人では起き上がれない。動けない。」ということが本当にある。連絡が取れなかった場合も、急死だけではなく、転倒や骨折などの理由で家の中で立ち往生して動けなくなっている可能性もある。親族の連絡先が遠方ならば、緊急時には近隣の人に、複数で家の中に立ち入ってもらうと助かるかもしれない。遠くの親類より近くの他人だ。

 以上の対応のためには、毎日の応答の手間のほか、家の鍵を預かってくれるような人が必要だ。ふつう、なかなか、そんな奇特な人はいない。日ごろの近隣との人間関係も重要だ。場合によっては、近隣の一人暮らしの高齢者同士で安否確認体制・緊急連絡体制を作っておいてもよいかもしれない。

 経済的に余裕があれば、以上の方法に加えて、各警備会社が用意している高齢者のみまもりサービスを申し込んでおく方法もある。窃盗・強盗などの通常の防犯・警備とセットにしたコースもある。警備会社では家の鍵を1本預かるので、非常時には立ち入りもしてくれる。 

身の回りをシンプルにしておく

 また、高齢者のみの世帯は、急病、窃盗、強盗など、何があるかわからない。非常通報ができるよう、寝る際は手の届く場所に電話や非常ブザーなどを置いておく必要がある。

 こうした措置にも限界があるので、加齢が進み、体調が思わしくなく、身の回りのことを一人でこなすことが大変になってきた場合は、介護保険によるヘルパーの依頼や老人ホームに入ることを検討する必要がある。 

遺影は故人の唯一のイメージ

 縁起の悪い話が続いて恐縮だが、元気なうちにこそ、「遺影」の準備をしておく必要がある。葬儀や法事では必ず遺影を掲げる。死を迎えるにあたっては、やはり、画質の良い、印象の良い遺影が必要である。

故人のイメージは、遺影の1枚で決まる

 どれほど多くのスナップ写真を残しても、やはり、故人のイメージは、最後の遺影の1枚で大きく左右される。この遺影が素人写真では、あまりに残念である。やはり、プロは違う。

 気に入った1枚を葬式用の遺影として、拡大して額に入れてもらい、子供など、葬儀を頼む人に渡しておく。この用意がしてあれば、死亡直後のバタバタの中では、非常にありがたい。葬式当日だけでなく、死後も残る「唯一の故人の遺影」となる。

 この遺影は、当然、葬儀でも法事でも使用する。義理の関係の親戚や会葬者など、故人をあまり知らない者にとっては、この写真が唯一の故人のイメージになる。

元気な時に撮影することに意味がある

 病を得てからの写真では、どうしても、「生気のない顔」、「頬のこけた寂しい病人の顔」になってしまう。それに、余命宣告されたり、いよいよ死期が迫ってから、「葬儀の写真を撮りに行こう」などとは、いくらなんでも言えない。そういう頃には、おそらく自由に外出もできない。また、元気な時に突然死という可能性もある。

 そうしたことから総合すれば、元気な時にこそ、さっぱりした服装と髪型にして、写真屋で鮮明な遺影を撮影しておくことに意味がある。濃色の服装の方が、斎場などで遠くから遺影を見たときに相対的に顔が映えるように思う。

 この遺影は、遺影が若すぎないよう、数年ごとに撮り直すことが望ましい。もらえる場合は、写真のデータをもらっておくことだ。少なくとも、私の両親の場合は、二人そろって遺影を撮影に行き、それぞれ、額に入れて用意してあった。その時は大げさだと笑ったが、結局、非常にありがたかった。

 葬儀の写真選びは悩むと思うが、「生前に、本人が見て、自分の遺影として気に入った写真」だったので、あれこれ取捨選択の心配がなく使用できたという点で助かった。葬儀の終了後、亡母の妹からは、「きれいな写真を使ってくれて、ありがとう」とお礼を言われた。「女性は何歳になっても、そういう見方をするのだな」と改めて思った。なおのこと、遺影の重要性を感じた。

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